“技術で環境を変える”ートマス技術研究所、環境課題の変遷に応じて新たな再資源化装置を研究開発
環境問題の主題が、時代とともに変化してきたように、私たちの技術もまた進化してきました。株式会社トマス技術研究所は、創業以来一貫して「技術を通じた環境改善」を企業理念として掲げ、時代ごとの課題に正面から取り組んできました。
創業当初、社会が直面していたのは「ダイオキシン問題」でした。その時代に私たちは、畳などの特殊廃棄物を小規模現場で安全に焼却処理できる小型焼却炉「チリメーサー」を開発。“焼却”という行為を、安全かつ現場主導で行えるようにしました。
その後、環境問題の焦点は「地球温暖化」へと移ります。その転換点に私たちは、“廃棄物を燃料に変える”という視点から、熱エネルギーを有効活用する「サーマルチリメーサー」を開発しました。
そしていま、「再資源化」が時代の主題となっています。循環型社会の実現に向け、廃棄物の中にある価値を見出し、再び社会に還すことが求められています。それを象徴するように、各種の再資源化に関する政策・補助金も活発になっています。
現場からの課題──離島で進行するグリストラップ処理の限界
離島地域では、グリストラップの廃液は回収できても、島内に処理施設が存在しないため、外部への輸送による処理が必要とされています。
しかし、この輸送コストと処理費用が高いため、実際には多くの業者が処理を断念し、基準を満たさない廃液をそのまま流しているのが現状です。これにより、下水道設備の詰まりや腐食、不具合が多発し、インフラのメンテナンスコストが急増しています。
この現実に対し、島内で処理できる装置が求められてきました。しかも、ただ「処理する」だけではなく、「再資源化」するという新しい答えが、今の時代には求められていたのです。
グリストラップ再資源化装置─“燃やすしかなかった廃液”から価値を再生
今回開発中の装置は、グリストラップ(厨房排水処理槽)から回収された廃液を、「液状成分」と「固形成分」とに分離し、それぞれを資源として再生する、いわば“再資源化のダブルルート”を実現するシステムです。
まず、液状の油分は蒸留・分留によって、バーナー燃料や工業用潤滑油として再生されます。また、スクリーンで回収されたし渣(しさ)や汚泥分は、乾燥・炭化工程を経て、自家製堆肥として再利用される仕組みです。
従来、グリストラップ廃液は「燃やして終わり」という一方通行の処理がほとんどでした。しかしこの装置では、「廃液から価値を取り戻す」ことができ、特に処理施設の少ない地域においては、地域内完結型の資源循環を可能にします。
トマス技術研究所は、ただ技術を作るのではなく、本当に必要とされている場所へ、必要な技術を届けることにこだわり続けてきました。今回の装置は、まさに地元が長年求めていた“答え”です。
これからも私たちは、「机上の空論より現場百回」の理念のもと、環境の最前線に立つ現場の想いに耳を傾け、技術の力で応えてまいります。
SDGsとの関連と貢献
本装置は、SDGs(持続可能な開発目標)の複数の目標において、極めて高い親和性を持つ技術です。
・「6. 安全な水とトイレを世界中に」
→ 排水の不適切な放出を防ぎ、下水道インフラの保全と水質の健全性を保ちます。
・「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
→ 廃油を再資源化し、代替エネルギー源として活用することで、エネルギーの地産地消と脱炭素に貢献します。
・「11. 住み続けられるまちづくりを」
→ 離島や地域において、環境と調和した廃棄物処理と資源循環を実現し、地域の衛生・安全・持続性を支えます。
・「12. つくる責任 つかう責任」
→ 廃棄物を再利用可能な資源として再生し、循環型社会の構築に貢献します。
・「13. 気候変動に具体的な対策を」
→ 焼却処理に頼らない再資源化によって、CO₂排出量の抑制と温暖化対策に資する取り組みです。
このように、私たちの技術は社会的課題と環境保全の両立を目指すSDGsの精神を体現するものです。
代表者の想い
グリストラップ再資源化装置
我が社トマスは今から22年前、「技術を通した環境改善」の理念を掲げ、技術者だからできること、また技術者じゃないとできない環境改善のために、との思いで、私一人で創業しました。
それから当時2003年はゴミ焼却に伴う環境問題解決の為に、小型焼却炉チリメーサーを開発し、その後地球温暖化防止の環境問題に答えるべく、焼却廃熱利用サーマルチリメーサーを開発、そして今は「再資源化」の流れの中で今回のグリストラップ再資源化装置の開発を行っております。
今回は特に、離島ではグリストラップ廃液を処理できる施設がなく、沖縄本島に輸送するコストが高く、処理費が経営を圧迫しております。「島内に処理施設を!」というやむにやまれぬ思いを受けて、半年前から開発にかかりました。
今は基本設計から実施設計に移り、その設計が確かかどうかを検証するプラントシミュレーターによる設計検証の段階に入ろうとしています。
そして3年以内には製品化できるだろうと、見込んでいます。
これができれば、離島の方々も、安価で安心してグリストラップ廃液を島内で処理できるようになります。今回の目玉は、単に処理するだけではなく、設備設計図にある通り、燃料と堆肥への再資源化を目指しています。
我々離島僻地で生まれて育った技術者だからできること、またそうでないとできないことがあると、私は信じています。
今回のプロジェクトは正にそれだと思います。
その為に、社員と共に一丸となって成功に向けて日夜頑張っていきたいと思います。
株式会社トマス技術研究所
代表 福富健仁