青ヶ島村の願いが叶い、東京都に超小型焼却炉チリメーサーが初導入!!
絶海の孤島170人の村の「脱炭素」戦略!
(株)トマス技術研究所(沖縄県うるま市、福富健仁社長)が「海を守りたい」「技術で社会に貢献したい」という一心で開発した超小型焼却炉「チリメーサー」が、今年3月30日に東京都にはじめて導入された。
導入先は人口170人の青ヶ島(青ヶ島村)。
島にとって大きな負担となる粗大ゴミや解体した家屋の木材などを「村内で処理したい」と村と都の担当者は1年以上にわたり、その導入を検討し、ついに東京都の条例をクリアした「チリメーサー東京型(TG-FW50TK)」の導入にいたったのだ。
青ヶ島村のSDGsにかける思いとこのプロジェクトの歩みをリポートしたい。
超小型焼却炉「チリメーサー」東京・青ヶ島の海を守る
東京都青ヶ島村は東京から南に358km、八丈島から南に70kmの絶海の孤島だ。SDGs(持続可能な開発目標) が人類共通のテーマとなっているなか、青ヶ島村でも立川佳夫村長(72歳)の「小さな村でも脱炭素の一端を担いたい」という方針のもと、「ゴミを必要以上に出さない」「運賃負担が大きい大型ゴミを環境に配慮した方法で処理する」などの施策が展開されている。そして大型ゴミの処理については、一昨年から青ヶ島村総務課廃棄物担当の職員が中心となり、島内外の調整や相談を重ねてきたという。
その努力が実り、この3月にはついに「チリメーサー東京型(TG-FW50TK)」が導入された。ちなみに、このチリメーサーは超小型で無煙・超低ダイオキシン、さらにCO2の排出量もほぼゼロで、コンピュータで誰でも焼却操作ができ、壊れにくいという特徴を持っており、開発企業の(株)トマス技術研究所のお膝元である沖縄県の各島はもちろん、インドネシアなどでも導入されているというスグレモノだ。立川村長もそのことにいたく感心したそうで、「離島のゴミ問題は深刻で、船で運ぶだけでも莫大な費用がかかる。そんな問題に先進的に取り組んできたトマス技術研究所の協力を得られたのは非常に心強かった」という。また、「今回の導入にあたっては、東京都の条例に適用するためにさまざまなカスタマイズを施してもらった。私たちの思いやニーズに寄り添ってくれたことに心から感謝している」と笑顔を見せる。
そもそも、青ヶ島村はSDGs という言葉が使われるようになる前から、積極的に環境にやさしい島づくりを推進しており、インフラ整備ひとつとっても村の規模にマッチした使い方のできる機械を探し、実情に合わせた改良を加えたうえで運用してきたという。たとえば、汚泥に関しては汚泥処理場をつくり微生物で分解し、食物残渣などの生ゴミはヒーターで水分を取り、菌で分解させ、たい肥として利用する。生活ゴミは週3回回収し、中型焼却炉で焼却処理するといった具合にだ。そして、これらはすべて村が設備を整え、直接一雇用した人員で運用してきたそうだ。「小さな島だからこそ、経済や環境のことを考えて正しい処理をしなければならない。また、島の自然を守ることは、島の暮らしを守ることにつながるとし、この島の人たちはそうした自主、自立、自治、共生の意識を厳しい自然環境のなかで育み、生活のなかに生かしてきた」と立川村長は話す。
もちろん、こうした青ヶ島ならではの自治意識に育てられた自然環境は観光資源としても活用されている。「青ヶ島は世界でも珍しい『二重式火山』(火山やカルデラの内側にもうひとつ火山が形成された地形)の島として知られており、米国の環境保護NGOによって『死ぬまでに見るべき世界の絶景13選』のひとつにも選ばれたほどだ。もちろん、この絶景からは『ひんぎゃ』(青ヶ島の方言で地熱蒸気を出す噴気孔のこと)や「地熱」などの恵みも。地熱を利用した『ふれあいサウナ』は観光客に大人気だ」と立川村長は胸を張る。
とはいえ、絶梅の孤島であるがゆえの苦労はつきない。実際、青ヶ島は島全体が断崖絶壁に囲まれており、かつては港に船が着岸することもできず、2000年まで艀(はしけ)取りによる荷役が行われていた。今では交通インフラも格段に向上し、港もつくられたし、八丈島からヘリコプター(1日1往復)で20分と短時間でアクセスできるようになったが、それでも船の欠航率が高いなど不便も多い。
だが、立川村長をはじめとした青ヶ島の人たちは前向きに未来を切り拓こうとしている。「サウナについても老朽化がすすんでおり、そろそろ建替えしなければならない段階にきている。だからこそ、青ヶ島の魅力をさらに積極的に発信し、外貨の獲得に注力したい」と立川村長。その一環として、これからは観光や移住促進にも大いに力を入れたいという。また、この4月からは民間主導で「離島留学」に取り組もうという動きもはじまったそうだ。「青ヶ島での生活を体験することで、自然をはじめとした身の回りにあるもので遊んだり、生活を豊かにしたりする術を学んでほしい。それは人格を形成するうえでも大いに役に立つと思う」と立川村長は目を細める。
そして「チリメーサーを最大限に活用することでSDGs な島としてのブランディングをはかるとともに、ゴミ処理に関するコストカットを実現し、島の未来に向けたこうした施策に投資していきたい」と力強く話す。チリメーサーを活用した青ヶ島のSDGsな挑戦がいよいよスタートを切った。
東京都との調整やカスタマイズなどチリメーサー導入までの道のり
青ヶ島村でチリメーサーの導入を担当した総務課事業係の小林みどりさん(27歳)は、もともと島のゴミ問題に頭を悩ませつづけてきたという。そうしたなか、一昨年の東京都島嶼町村の廃棄物担当者が集まる会で「チリメーサーは超小型で性能使い勝手ともに申し分ない。ゴミで悩んでいる小さな島にはピッタリではないか」という話を聞き、俄然、チリメーサーに興味を持つように。そして、チリメーサーについて調べた結果、超小型で無煙・超低ダイオキシン、さらにCO2の排出量もほぼゼロで、コンピュータで誰でも焼却操作ができ、壊れにくいという特徴があることを知り、「これだ」と膝を打ったという。
さらに、小林さんはこの超小型焼却炉を開発したトマス技術研究所の「技術を通した環境改善、社会貢献、新技術の研究開発」という企業理念にも共感を覚えた。そして.チリメーサーについても
①人口の少ない離島で焼却処理するため小型であること
②技術者も少ないため修理がカンタンにできること
③人手不足のため誰でも燃やせること
④メンテナンスに期間と費用をかけなくてもよいこと
を追求している点に共感したという。
こうして小林さんはすぐさまトマス技研にアプローチ。その結果、トマス技研の全国区での広報やPR、問い合わせ窓口を務めるNPO法人ふるさと往来クラブ(内閣府認証)事務局の花澤治子さん(71歳)が対応することに。しかし、導入にあたってはさまざまな課題があった。実は花澤さんはこれまでも、東京都の環境対策の窓口を訪ね、チリメーサーの性能や沖縄での導入実績を説明し、東京都への導入について相談したことがあったそうだが、その際には「東京都の条例に『火床面積が0.5m2以上』という規定があるため、超小型焼却炉の設置は、認められない」という結果に。しかし、花澤さんはあきらめなかった。「チリメーサーは東京の島々でもかならず役に立つはず」とそれ以降も島しょへの情報提供などを地道に展開しつづけていった。
当然、今回の導入にあたっても火床面積が最大の課題になり、なかなか許可は下りなかったが、それでも青ヶ島村とふるさと往来クラブは粘り強く交渉をつづけた。そういった状況を受けて、トマス技研も一念発起、従来型をカスタマイズした東京型の開発にチャレンジし、ついに火床面積0.504m2の「東京型」の開発にこぎ着けた。「従来型の性能を維持しながらのカスタマイズには苦労もあったが、これでようやく青ヶ島村のニーズを満たしながら、東京都の条例をクリアできる製品をつくりあげることができた」と福富健仁社長は微笑む。
そしていよいよ2月初旬には「チリメーサー東京型」を乗せた貨物船が沖縄を出発し、3月30日には無事、設置も完了した。「これを機に青ヶ島の人たちの暮らしが豊かになることを願っている。そして、東京のその他の離島や漂着ゴミ問題などに悩む自治体にもチリメーサーの導入を促し、一緒にSDGsな地域つくりを推進していきたい」とふるさと往来クラブの花澤さん。これからは「チリメーサーを活用した海洋教育や環境保全、地域デザインにも取り組んでいきたい」とのことなので、今後の動きにも期待したい。
速報! 全国版経済雑誌 月刊コロンブス(2024年1月号)記事
青ヶ島からのニーズで東京型を開発
導入から1年、その性能を点検!!
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日本で唯一の島マガジン「島へ」2022年6月号 (青ヶ島村様向けチリメーサー納品記事)
「島へ」2022年6月号
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