なぜチリメーサーは煙を出さないのか?

「焼却=煙」の常識を変えた発想
一般的な焼却炉では、ゴミが燃えるときにどうしても未燃ガスやススが発生し、それが煙となって出てきます。
チリメーサーはここを正面からつぶしにいった装置です。
福富は試作機の段階で、タイヤを燃やしたら真っ黒な煙がもうもう…という大失敗を経験しました。そこから、
「ゴミだけでなく、煙そのものも炉の中で“燃やし切る”」
という発想に切り替え、技術開発を積み重ねていきます。
煙まで燃やし切る「完全燃焼」のしくみ
チリメーサーの基本は、炉内を常に超高温(約800〜850℃)に保ちながら、ゴミと煙をまとめて完全燃焼させることです。
燃焼温度は自動制御され、燃え残りが出ないように常に最適な状態に保たれます。
この結果、
- 未燃のガスやススがほとんど発生しない
- ダイオキシン類の排出量が法規定の1/50にまで抑えられる
という「超低公害」の運転が実現しています。
3つの鍵:完全燃焼・エアーカーテン・水噴霧
チリメーサーが煙を出さない理由は、大きくこの3つの技術の組み合わせです。
- 燃焼室での完全燃焼
- ゴミが入る一次燃焼室でしっかり高温燃焼させることで、燃え残りやススの発生を抑えます。
- 煙突内部のエアーカーテン効果
- 煙突内部に空気の“カーテン”をつくり、未燃ガスがそのまま出ていかないようにします。
- 炉内に戻して再度燃やすイメージで、煙の元を徹底的につぶします。
- 燃焼室内での水噴霧(水蒸気の活用)
- 炉内に水を噴霧することで水蒸気が発生し、「水蒸気による炉内の化学変化」を起こします。
- この水蒸気が、ガスの分解や再燃焼を助け、煙の発生をさらに抑える役割を果たしています。
この「完全燃焼+エアーカーテン+水蒸気」という三位一体の技術が、
タイヤ・プラスチック・発泡スチロールなど、普通なら盛大に煙が出る廃棄物でも、ほとんど煙を出さずに燃やせる理由です。
センサーとロジックによる全自動運転
テレビ番組でも紹介されていた通り、チリメーサーの特徴の一つが、
「どんなゴミを入れても、誰が運転しても、煙が出ない運転を“自動で”やってくれる」
という点です。
- 炉の温度
- 煙の状態
などをセンサーで監視しながら、内部のロジックが自動的に空気量や燃料、噴霧のタイミングを調整していきます。
オペレーターは基本的に「ゴミを投入する」だけでよく、専門的な燃焼管理の知識がなくても、安定した無煙運転が可能です。
結果としての「超低ダイオキシン」と環境性
こうした技術の積み重ねにより、チリメーサーは
- 煙をほとんど出さない
- 悪臭を抑える
- ダイオキシン類排出が法規定の1/50という超低公害
を同時に実現しています。
その性能は、環境大臣賞をはじめとする数々の受賞実績にもつながり、
「住宅街のまっただ中でペット火葬ができる」「離島の漂着ゴミを現地で処理できる」といった、
現場のリアルな課題解決に役立っています。
まとめ:魔法ではなく、技術の塊
「タイヤを燃やしても煙が出ない」と聞くと、
一見“魔法の焼却炉”のように思えますが、その裏側には
- 高温完全燃焼
- エアーカーテン
- 水蒸気による化学反応
- センサー+自動制御ロジック
といった、地道な試行錯誤から生まれた技術がぎっしり詰まっています。
これが、チリメーサーが「何を燃やしても煙を出さない」と胸を張って言える理由です。
今後、この技術がもっと多くの現場に広がれば、
日本だけでなく世界のゴミ問題の解決にも、きっと大きく貢献できるはずです。