トマス技研(上) 「技術通し環境改善、無煙焼却炉でゴミ問題解決へ」琉球新報2025年2月7日(金)経済面に連作(1)

トマス技研(上) 「技術通し環境改善、無煙焼却炉でゴミ問題解決へ」
琉球新報 2025年2月7日(金) 経済面

 

琉球新報 経済欄
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技術通し環境改善、無煙焼却炉でゴミ問題解決へ

無煙のゴミ焼却炉、海外も注目

有害物質を発生させない無煙小型焼却炉「チリメーサー」を主力製品に事業展開するトマス技術研究所(うるま市、福富健仁社長)。離島など地理的不利性を抱える自治体を中心とした全国の自治体やアジア圏へのゴミ問題解決に注力している。確かな技術と開発力で数々の賞を受賞してきたほか、インドネシア・バリ島の医療廃棄物の適正処理に貢献したとして、2019年G20大阪サミットでは途上国支援事業の「優れた案件(グッドプラクティス)」として紹介され、国際的認知度も高まった。しかし、コロナ禍のロックダウン(都市封鎖)で軌道に乗り始めた海外事業の中断を強いられるなど、いままでの道のりは順風満帆ではなかった。

トマス技研創業のきっかけは2000年に施行されたダイオキシン類対策特別措置法だ。福富健仁社長は当時、県内プラント企業に焼却炉の技術者として勤めていた。当時は、学校施設内などでも簡易な焼却炉があり、排出される紙などのゴミは校内で焼却処理されていた。だが、環境汚染への懸念などから、ゴミの適切な処分を求める社会的な背景もあり、事業者らが自前でゴミを焼却処分することができなくなった。

■タイヤ燃焼でも無煙

「業界にとっては大激震だった。自前で処理できなければ処理費用がかさみ、経営が立ちいかなくなるという企業も多くあった」と福富社長は振り返る。福富社長は法律で定められた焼却設備の基準を頭にたたき込み、試作機の構想に着手。考えついたのは「タイヤを燃やしても煙の出ない小型焼却炉」だった。

ある経営者の出資も取り付け、試作機の開発に取り組んだ。一定の道筋を付け、出資者を招いた実証実験に臨んだが、タイヤの燃焼を始めると、黒煙が立ち上り始め、しまいには高さ3㍍ほどの火柱まで立ち上った。完全な失敗だった。

■失意のひらめき

失意の中、必死に頭を働かせてもアイデアは何も浮かばなかった。疲れ果て、我を忘れながら湯船に浸かった。しばらくすると、窓を閉め切り、換気扇も回さずにしていたことから息苦しくなった。思わず、湯船を飛び出し、窓を開けた瞬間、福富社長はひらめいた。

「水蒸気で燃焼をコントロールできないか」。風呂場を飛び出し、そのままの姿で焼却炉の製図に取りかかった。

翌朝6時、福富社長は早速、焼却炉の組み立てに取りかかった。8時ごろに出勤してきた社長にタイヤの燃焼事件を再度みてもらった。タイヤを炉内に投下し、燃焼させると昨日と同じように白煙が上がり、さらには黒煙まで立ち上った。周囲からは「あー」と落胆の声が上がる。「昨日と同じじゃないか」。周囲からは落胆の声が漏れ始める中、福富社長が合図し、スイッチを入れると炉内で変化が起き。煙はピタッと止まった。「うおー」。驚嘆の声が上がった。チリメーサー誕生の瞬間だった。

■技術の前に需要把握

いまでは顧客の要望を踏まえて改良を重ねたチリメーサーは150種類を超える。福富社長は「イノベーションの前にマーケティングがある。顧客の困りごとを聞いて世界に唯一の製品をつくる。それがトマスの強み」と強調する。当初は苦戦を強いられたが、チリメーサーの売上台数は10台、20台と着々と納品数を伸ばしていった。その環境性能も評価され、06年には環境省から地球温暖化防止活動として、環境大臣表彰を受けるまでに至った。県内離島を中心に、廃棄物処理に課題を抱える県外離島や山間部などの自治体での導入が進むなど、着々と業績を伸ばしていった。

そうした中、海外事業へのチャンスが突如訪れる。13年、西原町小那覇に当時構えていた事務所に、突如アポなしで訪れた客がいた。たどたどしい日本語で話した客は「インドネシアから来ました。私たちの国のゴミ問題を解決してほしいのです」。真剣なまなざしに福富社長は話を聞くことを決めた。

つづく…

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2025年2月14日お知らせ